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この夏、はじめてデコレ村の村民と出会いました。
出会った場所は、オフィスビルの会議室。
テーブルにならべられたシートの一枚一枚の上で彼らは笑っていました。
長老ですと紹介されたカメ。
わんぱくな子で、と紹介されたサルのヤッチー。
さらにブタのトミコ、イヌのジーヌ、ネズミのシズネ、マメたちなど大勢。
みんなが空の青色と大地のみどり色を映してくったくなく笑っていました。
彼らデコレ村の村民と会ったのは「仕事」のためでした。
彼らの物語を作るというのが依頼された「仕事」でした。
・・・考え込みました。
物語を作るというのは時に運命や宿命や試練や幸・不幸を投げかける
ようなもので、初対面のわたしが、この笑顔の彼らにそういうことを
するのは失礼に思えたのです。
そんなで、彼らを前にして、わたしはインタビュアーといった「仕事」
をすることにしました。彼らがしゃべりはじめて、それを書き留めるう
ちに物語が出来てきたなら合格。彼らがしゃべってくれなかったらわた
しは「クビ」。そう決めました。そして、彼らが突然しゃべりだすのを
待って、たっぷりのメモ用紙とペンを用意して暮らし始めました。
数日後、天気の良い日でした。ベランダで洗濯物を干していると
「ネェ、遊んでほしいんだ」と声がしました。誰の声だろうとデコレ村の
みんなの絵を見つめました。「ボクじゃないよ」とヤッチーが言いました。
「ワタシでもないわ」とトミコが言いました。たしかに彼らは洗濯する人
間の足元にまつわりつくことはしなさそうです。長老が「分かるかな?」と
一緒に絵を覗き込みました。
絵の中からねずみがこちらに向かってクスクス笑っています。
そう、この子の声です。
「これは誰?」
急いで「キャラクター紹介」と書かれた資料をめくっていくと9ページ目に
シズネと紹介されていました。
急いで書きました。
“シズネが言う。「ネェ、遊んでほしいんだ」”
これが一番最初のメモです。
「みんなとは遊ばないの?」
「遊ぶけど、ボクは小っちゃいからうまく遊べないときもあるんだ」
「たとえば、どんな?」
シズネは目をシバシバさせ、それからキョロキョロします。
答えたくないときのしぐさのようです。
これが二番目のメモです。
こうやってシズネがしゃべりはじめてくれたおかげで他のみんなも
集まってくれるようになりました。みんないい声をしてるし、いい
しゃべり方をします。ひとが好きになるときって、その声やしゃべり方
からのような気がしますが、彼らをそのように好きになりました。
そうやってメモの厚さが10センチほどになり、デコレ村のことが皆
さんにどうにか伝えられるようになってきました。それはわたしの友
達の話のようですからもはや「仕事」という言葉がしっくりきません。
でも、原稿締め切り日はありますが・・・。
まもなく、このデコレ村のみんなの話をお届けできると思います。
読んでもらえると、とてもとてもうれしいです。
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